ヒューマンライブラリPart.6:LGBTQIA(性自認)を属性とする社員へのインタビュー

<1、3、4の文責・榎澤幸広(名古屋学院大学現代社会学部准教授)、2の文責・國吉陽介(株式会社アイエスエフネット ダイバーイン雇用委員会 委員長)>

1.はじめに
ヒューマンライブラリ②で触れた【性的指向(sexual orientation)】と同様、【性自認(gender identity)】に関しても、ゼミ生たちにとってもともと関心が高いテーマでした。このヒューマンライブラリを実施するまでの期間、TOKYU KABUKICYO TOWER(東急歌舞伎町タワー)2階に設置された“ジェンダーレストイレ”(性別に関係なく使用可能な個室8、女性用個室2、男性用個室2、多目的個室1からなる13の個室部分と鏡や手洗い場所など共用部で構成)をめぐり、SNS上での批判が話題になった時期も重なり、その関心度合いはさらに高くなりました(また、同時期に経産省の最高裁判決もありました)。

ゼミ生の中には、このタワーのトイレ設置が「だれひとり取り残さない」トイレ実現につながる最適解なのか、お茶の水女子大学などの先行事例を調べ、タワーに足を運んだものもいました。

この点、学生コメントを読んでみると、今回登壇してくださった社員の方は、最適解に辿り着くために必要な、いくつかのルートや中継地点を紹介してくださっておりますので、読者の皆さんの考えるヒントになるかもしれません(登壇社員は急遽仕事が入ったため、途中から参加。そのため、当日の司会者が、登壇社員作成の「学生の事前質問に関する詳細な回答メモ」を読み上げる形で行いました)。

ところで、トランスジェンダーに関する話が2023年に集中したがために、最近の事例かと思われる人もいたかもしれません。しかし、20年以上前、『3年B組金八先生』(TBS系列で2001~2002年放送)にて、上戸彩さんがその役を演じ話題になりました。
また、その放送直後の2003年、『性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律』が制定されております(この法律の性別変更手術要件規定を憲法違反とする最高裁判決が昨年出ました)。

この法律制定以前からこの社会で苦しんでいる人の存在に光が当たったことはよいことではあるものの、この法律制定後のおおよそ20年間が「だれひとり取り残さない社会」実現へ向かって少しでも進んでいるのか、みなが改めて考え、よりよき方向へ行動することはとても重要なことです。
そして、この法律自体にも改善点がないのか、考えることも無論重要かと思います。例えば、心の性別が戸籍上の性別に一致しないという点から、法律上、“障害”という言葉を用いることが適切なのでしょうか。(※1)

また、“同一”や“一致”という言葉も正しいものに戻すという意味合いを持つようにも感じられます。これは私が疑問に思ってきたことなので一例としてあげさせてもらいましたが、以上のことに関していくつかの考え方や道筋を示してくれるのが、アイエスエフネットの取り組みかもしれません。
このことを確認してもらうためにも、2.において、アイエスエフネット側が社内での取り組みを記載してくださっております。
また、登壇したLGBTQIA(性自認)を属性とする社員本人の了解を得られる範囲内のプロフィールもここにて紹介されておりますので、3.の学生コメントを読む前に一読していただけたらと思います。

(※1)性同一性障害という言葉は、APA(米国精神医学会)においては2013年に「性別違和」に変更され、WHO(世界保健機関)においては2019年に精神疾患から外され「性別不合」に変更されることが決定しました。

2.アイエスエフネットの取り組み&LGBTQIA(性自認)を属性とする社員に関して
アイエスエフネットグループが掲げる人権方針に基づき、当社では「ダイバーイン(※2)雇用」に取り組んでいます。個人が抱えるさまざまな特性や個性によって就労困難な方に対し、環境や仕組みをつくり上げることで本人や周りの方々が働ける場を提供することが目標です。

当社では、全ての社員が性的指向と性自認のありようによって差別されることなく就業できるよう、就労環境や関連制度の拡充を行ってきました。

  • 性別を採用時のエントリーシートでは性別を記載する項目は設けていません。
  • 管理職社員に向けた専用サイトへLGBTQIAの方からカミングアウトを受けた際の対応など、職場における環境づくりに関する動画を掲載しています。

また、全国各地のレインボーイベントに協賛・参画しています。

直近の参加実績

  • 名古屋レインボープライド2023
  • 九州レインボープライド2023
  • 名古屋レインボープライド2022 など

2024年も各地のイベントに参加予定です。

その他にも、管理職向け、新入社員向けの講習会の実施や福利厚生などの制度の見直し、ダイバーイン雇用委員会の設置など、各種取り組みの充実を図っています。

(※2)ダイバーシティとインクルージョンを掛け合わせたアイエスエフネット独自の言葉

【登壇者のご紹介】
氏名:
S.H.さん

自己紹介:
大好きな我が子たち(猫)に癒されながら、常駐先で七転八起を繰り広げています。
最近は家を購入したので、猫の遊び場を日々検討しています(笑)。
最近の悩みとしては毎晩喉を鳴らしながらみぞおち辺りを狙ってフミフミしてくることです(可愛いので怒るに怒れないですが・・・。)

▲S.H.さん撮影

いつもはやんちゃな子たちがこのときは添い寝をして甘々モードな珍しいところでした(笑)
この後一緒にお昼寝しました!

学生さんに向けたメッセージ:
今回はこのような機会を設けていただきありがとうございます。
私自身こういったアウトプットをする機会がなかったので、とても緊張しましたが、数年後を見据えるとすごくよいことだなと感じました。
うまくお伝えできたか心配は多々ございますが、少しでもお役に立てられたら幸いです。
今回のセッションは本当にありがとうございました。

会社に向けたメッセージ:
配慮についてアイエスエフネットでは、前職や他の企業と比較しても特に尽力いただいています(ワーキングネームの対応や社内報による社内全体への理解など)。
また定期的に相談や雑談含め実施していただいており、役職関係なく自由に発言できるため、上席の方とも壁をつくらずに本音で話し合えることが非常に魅力的だと感じております。
おかげで自身の他にも悩みを含めて情報共有を実施できており、大変参考になります。

3.学生のコメント
ここでは8人の学生コメントを取り上げたいと思います。

  1. ヒューマンライブラリのお話ではアイエスエフネットに入社して良かった点として、当事者同士の交流ができるSNSコミュニティをあげられました。このように、マイノリティの方は公表していなかったりする方も多い中でこのようなコミュニティがあることは心強いなと思いました。

    また、マイノリティとしてではなく、個性として接することができる環境はもっと会社を含む団体や組織に普及していくべきだと思います。

    さらに、話題のジェンダーレストイレの利用に関しては、安心して利用できそうな環境が整えば利用したいということで、当事者同士が使いやすくするためのしくみが必要だと考えました。当事者だからという共通認識ではなく、各個人の意見がさまざまなので、難しい問題であると再認識しました。

    現在、主流である男女別トイレで個室を増やすだけでもかなり利用しやすい環境になり、安心して利用できると考えます。この問題に関しては性犯罪のリスクもあることからすぐには解決は難しく、付き合っていかなければならない課題だと感じました。
    (山口夢生)

  2. ダイバーイン雇用ならではの、同じ境遇の人が沢山いるため、相手の気持ちをしっかり理解している人が多く、当事者同士でやり取りできるSNSもあると聞き、会社側の対応、対策がしっかりされていて、素晴らしいと感じました。
    また、相談窓口などもあるため、当事者が多いアイエスエフネットの社員はとても安心して仕事に取り組めているのではないかと感じました。なかなか当事者同士で話す環境づくりや対応の仕方が難しいと思いましたが、こういった施策や対応をしっかりと行っているからこそ、理解者やサポートをしてくれる人も多く、不満も少ないという結果に結びついているのではないかと感じました。
    アイエスエフネットは社員にちゃんと寄り添ってくれる企業だと感じとても魅力的だと思いました。ありがとうございました。
    (小瀬 舜)
  3. MtF(※3)の方へのインタビューでさまざまな意見を聞けました。
    社内環境では、SNSのコミュニケーションがあり役職関係なく自由に発言ができるということは一人の社員として平等に話し合いができ、個人の属性を気にせずに働けると思いました。
    またアイエスエフネットでの改善点についての質問は今のところはなく、短いスパンで改善案を出す場面があり不満に思うことがあってもしっかりと対応がされていると思いました。多様性に理解のあるアイエスエフネットはとても働くのによい環境であるということがわかりました。
    ジェンダーレストイレに関しては、MtFの方は使用はしたいが使用できるレベルではないなら、生殖器によって分けたり、多目的トイレをさまざまな場所に普及させる手段も検討すべきとのことでした。自分にできることを改めて考えて当事者への配慮の仕方や正しい知識を周囲に広めていきたいと思いました。
  4. 私が今回のヒューマンライブラリでとても印象に残ったことは『LGBT法(※4)』に対する当事者の考え方でした。私は『LGBT法』に対して治安面などから少し不安に感じていました。私がそのように感じているように当事者の方も一部の行き過ぎた行動により今以上に理解されづらくなるのではないかという懸念を抱いていました。
    しかし、こうした懸念もあくまでも一部の人の行動によるものでしかなく、そうした人は法の有無などに関わりなく罪を犯すということから別の問題として考えるべきだとしていました。
    その考え方を聞いて私の中の『LGBT法』へのイメージが変わりました。『LGBT法』は当事者への理解を広めるための法であり、決して犯罪を助長するものではない。
    メディアでは負の側面ばかりを報道しているので本来の『LGBT法』が持つ意義を周知させるための報道もしっかりと行っていくべきだと感じました。
    (N.S)
  5. 今回、お仕事の関係でS.H.さん本人から直接お話をお聞きすることはできませんでしたが、事前に用意されていたという回答の内容から、このインタビューのためだけでなく、普段からもマイノリティやLGBTQIAに関する問題についてよく考えていらっしゃるのがわかりました。
    例えば、ジェンダーレストイレについては問題の指摘だけでなく、どのような形であるのがよいのか、当事者はトイレを利用する際どのように判断すべきかなどについて、ご自身の考えと自分は今どういった対応をしているのかについて回答してくださいました。
    また、アイエスエフネットでは短いスパンで改善提案をする場があり、頻繁にさまざまな意見を聞けるため、気づかされることが多いとおっしゃっていました。
    さらに、SNSには当事者だけのグループもあり、そこでは本音で話せて社員同士の関係も深められるそうです。
    このように、定期的に意見交換できる機会を提供することで、社員同士の円滑なコミュニケーションやスムーズな情報共有を可能にしているだけでなく、社員の視点から多様な意見を取り入れて改善につなげているアイエスエフネットは、会社と社員が共に成長していける理想的な企業であると思います。
    (K.N)
  6. 私が印象に残った点は二つあります。一つ目は、アイエスエフネットの取り組みについて印象に残りました。
    アイエスエフネットへの改善点について伺ったときに「特にない」といっていて、マイノリティの方でも働きやすい環境づくりが徹底されていることが伝わってきました。
    例えば、アイエスエフネットでは改善点を短い期間で発表したり、当事者の方への配慮をするといった取り組みがなされていることがわかりました。
    二つ目は、マイノリティの方の中にもさまざまな人がいることです。今回LGBTQIAの当事者の方にインタビューして聞いたことが全てのLGBTQIAの方に当てはまるわけではないことを理解しなければならないと思いました。
    1人の話だけを聞いて自分がマイノリティの方への配慮ができていると思い込んでいると不快にさせてしまうことがあると思います。なので、全てを知った気にならずに自分の知識を更新していく必要があると思いました。
  7. S.H.さんに前職と現職の職場環境の違いについて伺いました。
    前職では会社全体や上層部でのマイノリティに対する理解度、認知度が低く、設備的課題も多かったことに対して、現在の職場は理解浸透度が高く、ワーキングネームの使用など、自分らしく働けると聞き、社会全体がアイエスエフネットと同じような環境になれたらいいと考えました。
    カミングアウトしたきっかけはご遺族の方のお言葉とお聞きしましたが、アイエスエフネットだからこそできたことだとも思います。
    また、アイエスエフネットの利点に関して、改善提案を細かいスパンで提案し、全社員に周知してくれ、情報の透明性が高いことをあげてくださいました。このような利点がマイノリティへの理解浸透度が高い要因の一つかとも感じました。
    また、現状はいいが数年後を見据えると足りない部分も出てくるとのご意見、登壇者である私以外の当事者の声を聴いてほしいというご意見をいただきました。
    今回聴く側であった私は基本的にシスジェンダー(※5)でヘテロセクシュアル(※6)ですからどうしても足りない部分に気がつきにくいです。より目を凝らして多角的に数年後も視野に入れて一見完璧に見える多様性制度の誤りに気がつけるようにしたいとS.H.さんのお話から考えさせられました。
  8. 私は、アイエスエフネットとの質問会で、女性の性自認の方へのインタビューを行いました。
    入社のきっかけの一つにアイエスエフネットがダイバーシティに積極的だったことがあげられていていました。他の社員も同じような理由で転職された方が多く、ダイバーシティを掲げている企業は当事者にとってとても魅力的な会社に映るということがわかりました。
    また、以前の会社では上層部の理解が得られなかったが、アイエスエフネットでは配慮が足りており、とても働きやすい環境と話していました。
    昔からテレビではLGBTQIAの人たちに対し笑いを取ってきた歴史があります。その影響からいまだ偏見を持っている人もいるが、そういった偏見に苦しむ人を救うためや世間での認識を改めるためにも、こういった会社の存在は大きいと思います。
    私たちができることは、当事者の意見をもっと聞き、苦しまない環境をつくることです。そのため、今回の活動のように、一歩一歩進んでいくことが大切だと感じました。
    (石川 太陽)

(※3)MtF(Male to Female):生まれたときに男性という性を割り当てられたものの、女性として生きることを望むトランスジェンダーの方を指します。引用:JobRainbowMAGAZINE
(※4)LGBT法:正式名称を『性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律』といい、通称『LGBT理解増進法』と呼ばれる。性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策の推進に関し、基本理念を定めたもの。引用:内閣府HP
(※5)シスジェンダー:出生時に割り当てられた性別と性自認が一致している人
(※6)ヘテロセクシュアル:恋愛・性的対象が異性の人

4.次回予告
次回は、1月12日投稿の1回目から今回までの内容をふまえて、アイエスエフネット側が総括やコメントをしてくださることになっております。約2週間後の4月中旬頃掲載予定ですので、引き続き閲覧していただけたらと思います!

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※この記事は、公開時点の情報をもとに作成しています。