2024年度<企業×学生連携ヒューマンライブラリ>開催に関して~イントロダクション

文責・榎澤幸広(名古屋学院大学現代社会学部准教授)

1.2024年度「ヒューマンライブラリ」開催に関して
昨年度に引き続き、2024年10月28・30日、難病やADHDなどの属性を持つISFnet社員に対し、名古屋学院大学現代社会学部の榎澤ゼミ2~4年生(計41名)がヒューマンライブラリ形式のオンライン・インタビューを行いました。

「ヒューマンライブラリ」の詳細に関しては、昨年度のイントロダクション記事(2024年1月12日)<https://www.isfnet.co.jp/isfnet_blog/index.php/2024/01/12/2689/>にも記載させて頂きましたが、初めてこれに関する記事に触れられる方もいらっしゃるかもしれませんので、「ヒューマンライブラリ」の定義を以下に再掲したいと思います。

「ヒューマンライブラリ」とは、マイノリティや社会的弱者本人を“本”に見立てその人の人生を知る試みですが、実際のやり方は、彼ら(本)に対し参加者(読者)がいろいろ質問し、その後の対話を通じてその人の人生を知っていくというものです。……
……この形式は、「この社会には様々な人が存在していること」、「その人たちがこの社会でどのような生きづらさを感じているのか」などを参加者が知るきっかけになるだけではなく、当事者本人も語ることによって新たな気づきやつながりなどを得る可能性もあります。

実際のヒューマンライブラリは、何の知識や経験のない人でもそこに参加し、対話を行っていくというものです。しかし、昨年度と同様、うちの学生は、学部や私の授業などを通じて「マイノリティの人権」に関する基礎知識や理解がそれなりにありました。従って、当日の登壇社員との対話をより深いものにするため、1)各自が登壇社員の属性について調べ、2)それをふまえ質問を作成し、3)割り当てられた3つのグループ(A~C)毎に質問を練り上げ、4)各グループの4年生が最終調整を行い、5)ISFnet側に質問一覧を事前に送り登壇社員に内容を確認してもらうというプロセスを経て、当日開催に至っております。

従来のヒューマンライブラリと比べ若干変則的な形式ですが、今回もこの形式を採用したのは、①何よりも質問一覧があることで、学生側も登壇社員側も安心してその場に参加できる確率があがることにあります(登壇社員が答えにくい/答えたくない質問には回答拒否も含めた準備がしやすい)。また、②お互いが事前に準備できていることから、当日の対話がより深いやりとりになり、双方にとって様々な気づきやつながりを得ることができました。更に、③この取り組みは継続的に行ってほしいという登壇社員側の声が多くあったこともこの形式採用理由の一つです。

2.昨年度からの変更点
一方、昨年度は無かった『社員同士の対話の時間』も設けました(昨年度は『社員インタビュー』のみ)。これを設定した理由は、昨年度、「ISFnetの改善点をあげるなら何かあるか?」という学生質問を受けた登壇社員の何人かが、「様々な属性を持つ社員同士の交流」を提案したからです。この提案を受け、ISFnetと私は打ち合わせを何度も重ねましたが、対話をする相手は、ヒューマンライブラリを経験している「2023年度登壇社員」が良いだろうという結論に落ち着きました。そこで、彼らに打診後、シニア、HSP、LGBTQIA(性自認)、
LGBTQIA(性的指向)属性の社員が参加できることになり、そこに新たに参加の名乗りをあげて下さったADHD属性の社員も加わることになりました。

そもそもこの取り組みを行うきっかけが、(1)この会社のダイバーシティ推進を持続可能なものにしたい、(2)さらに改善点を見出し、より良いものにしたい、(3)そのためにも学生の視点を伺いたいというものであったことから、この提案は嬉しい悲鳴でした。

この点、「30以上の属性を持つ社員を雇用し、それぞれの社員に合わせた制度を採用するISFnetに改善点などないのではないか」と思っていた学生もいたので、うちのゼミ生にとって、「うまくいっている時ほどその成功原因や改善点を分析することの大切さ」や「よりよい社会にするためにはアップデートやマイナーチェンジの繰り返しが大切であること」などの示唆を得ることにもつながりました。

3.登壇社員と当日のスケジュール
ここからは当日の概要などを示したいと思います。

(1)登壇社員×対話社員の属性
今回の登壇社員(左)と対話する社員(右)の属性は以下の図のようになりました。

(2)当日の概要
今年度は、大移動の混乱を避けるため、3つの学生グループがそれぞれの部屋に待機し、登壇社員・対話する社員・常駐社員3名が各部屋を訪問するという形にしました(昨年度は学生側が移動)。1セッションが30分で、主要な流れは、①学生インタビュー(15分)、②社員同士の対話(10分)、③学生側の追加質問(5分)となります。両日ともこれを3回繰り返し、その日に登壇した社員らと学生全員が相互にふれあえるようにしました(ここは昨年度と同様)。

異なるのは、②と③です。は、社員同士が共通する2,3のテーマについて対話しました(例えば、トランスジェンダー女性×LGBTQIA(性的指向)は「カミングアウト」など)。③は、①②を通じ、学生らに更なる質問が浮かぶことが予想されましたので、追加質問の時間にしました。私が様々なセッションを巡回する限りにおいて、学生らの質問はこの時も途絶えてなかったように思います。短い時間ながらも情報量の多い濃厚な時間を過ごしたことが彼らのこのような反応や成長につながったのかもしれません。

4.今後の予定
ヒューマンライブラリに関する記事は、このイントロダクションを皮切りにして、登壇社員やインタビューを終えた学生たちの声を中心に、毎月2回、このホームページ上に掲載していきたいと思います(2025年4月頃まで、このイントロダクションとクロージングも含め、8回連載予定)。

第一弾は難病を抱える社員との対話です。2025年2月10日掲載予定ですので、引き続き閲覧して頂けたらと思います! よろしくお願い致します。